眉ペンシルに宿るもの②(ちゃんとレッスン編)
この日、鵜飼先生のメイクレッスンでお願いしていた内容は、
前回と同じ”眉ペンシル削り”
いつかのこの店長日記にも書いたことがありますが、
鵜飼先生と私を繋いでくれている
カマタメイクアップスクールのアイブロウペンシルは、
独自の削り方があり、これを習得するのは、なかなか至難の業です。
去年の11月に眉ペンシルのレッスンを受けてから
自分で削るもうまくいかず、半年たった眉ペンシルは見るも無残な姿になり
レッスン予約の時点で、鵜飼先生には
「眉ペンシル、見てもびっくりしないでくださいね」と
備考欄に書いておきました。
この日、鵜飼先生と私は、3時間かけて眉ペンシルを削ることになります。
鵜飼先生の眉ペンシルを削る音は、とても気持ちいい音がします。
”シュッ、シュッ、シュッ”
同じリズムで、同じ動きで、少しずつ、確実に、どんどん綺麗に削られていきます。
先端の芯の部分は、細く平たく。そこから下の木の部分は削りすぎず、丸く膨らませながら
面を綺麗に凸凹にならないように削ります。
ペンシルを上から、横から見て、削った断面を手で触り形を整えていきます。
(ついに、同じペンシルとは思えない仕上がりになりました)
この日、鵜飼先生と眉ペンシルを削りながら
いろんなお話をしました。
先に行ってきた恵文社の事、メイクを担当している”NIMAI NITAI”さんのお洋服の素晴らしさ。
松栄堂の香りについて。
京都には、芸術や美容を盛り上げていこうとする団体があり、
そこのトップの方が懇意している鵜飼先生を押して、
今年の『婦人画報』5月号で女優 真野響子さんのメイクを担当されました。
この時の真野響子さんの、お仕事に対する姿勢のお話。
さらに、これからの美容業界についてのお話にも発展しました。
自分たちにしか成し得ない技術やデザインを重視するよりも、
化粧品や物を売ることを重視する方向にシフトしていることへの違和感。
AIがもたらすファスト社会だからこそ、
私達(人間)は、穏やかに考え、人を前にして時間をかけて考える能力を
鍛えるべきだと。
この仕上がった眉ペンシルを持ちながら、
「ね、綺麗に削れた眉ペンシルを持ったら、めっちゃテンション上がるでしょ!」
と笑う鵜飼先生。
綺麗に眉ペンシルを削ったとて、たったそれだけの事かもしれない。
でも、ここでもまた、その言葉だけでは伝えきれないことが、
この眉ペンシル一本に宿っている。
どんな仕事であっても、その土台となる部分を支えているのは
簡単に言葉にできない、語りつくせない、
その人の時間と労力の結晶なのではないかと
鵜飼先生と話して思ったのでした。
とっても充実した一日。
また、ひょっこり来よう。