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夏至の日に

先日6月21日は二十四節気の「夏至」にあたる日でした。「夏に至る」と書くようにこの頃から、どんどん季節は夏に向かっていく感じがします。北半球では1年のうちでお昼の長さが最も長くなります。

私にとって6月21日は少し特別な日。とてもお世話になったお客様で、乳ガンを患われて亡くなられてから、もうどれくらいだろうか?命日は正確にはわからないのですが、まだLINEというものがなかった時代、このお客様のメールアドレスは、お名前に似せたアルファベットと一緒に連なっていた“6,2,1”。ご自身のお誕生日の数字。だから、6月21日は仕事の前にそっと手を合わせる日にしています。

この夏至の日にご来店頂いたお客様の中で、

「春分の日」「夏至」「秋分の日」「冬至」この4つの節目を意識して過ごすという方がいらっしゃいました。例えば、その日に断捨離をするとか、何かその人なりのアクションを起こすということでした。

このお話をしてくださったお客様というの施術中に、入り口のドアのノックがなりました。入り口の方を見ると、ドアの向こうに少年がいます。

一瞬、幻覚?と思って、お客様がうつっているセット面の鏡に視線を戻して、もう一度ドアの方を改めて見ると、やっぱり少年がいる。さらに、もう一度ノックの音。

あわてて、ドアを開けて「あの?何か?」と少年にたずねると

「ここって、ヘアカットできますか?」

「できます。けど。。。えっと、ご予約がこの後も入っているので、3時間後にしか無理なんですけど。」

「わかりました!また3時間後に来ます!」

(えっ?お客様の息子さんかなぁ?聞いてないけど)

「あの、お名前は?」

「アキラです」

(いやいや、いやいや、アキラ君、ここは苗字で言うところでしょ)

「あの、上のお名前、というか、苗字を教えてください」

「佐藤です」

(知らないなぁ)「じゃあ、3時間後ね」

と言って、来ないだろうなと思って、次のお客様を終えて、お見送りをしに階段を降りると、目の前に、アキラ君がいる。(あれ?来た。。。)

3時間待ってくれた事にお礼を言って、一緒に階段を上がる。

「どこから来たの?」「港区です」(Mueのある西区でもなく、お隣の大正区でもなく、港区?)

「この3時間、どうしていたの?」

「お腹すいたから、ご飯食べてました。カレー食べようと思って、この並びのカレー屋さんはいっぱいだったので、前のインド、ネパール料理のお店でカレーを食べました。でも、ご飯じゃなくてパンみたいなの出てきて(おそらく、ナンが出てきたっぽい)、食べ方わからないから、お店の人に聞きました。」

「どうやって、このお店を見つけたの?」

「Google Mapで“ヘアカット”で検索したら、一番に出てきたから、もうここでいいや。と思ってその画面から電話した。電話したけど、繋がらなかったんで、直接来た。」確かに、電話が鳴ったけど、とれなかった時間があった事を思い出す。

とりあえず、カットに入りながら、話が始まりました。このアキラ君、やたらとお店をほめてくれます。「このお店、いい香りがしますね。」とか「むっちゃオシャレですね。」とか「あの機械、何に使うんですか?」とか。さらに

「何歳ですか?」「私?(聞かんといて)46歳」「若く見えますね~。」

このアキラ君、ただいま中学3年生。こんな社交辞令まで言えちゃいます。他に比較対象を知らない私。今時の中学3年生は、こうなの?アキラ君がイケてるのか?むしろ、変わってるのか?わからないけど、とにかく会話が進みます。ちなみに、お姉さんはハンドボールでドイツにいらっしゃる。

ヘアスタイルは普通の「ツーブロックじゃないスッキリショート」の画像を見せてくれたので、その様に。

「前髪は彼女さんが切っちゃダメっていうんで、おいといてください」

(彼女に“さん”はいりませんからね~)と思いながら、おそらく私と同じ歳位であろうアキラ君のお母さんに代わって

「前髪は、うっとうしいから切りなさいって、お母さん言うでしょ」

「別に」

「あ、そうですか」

実は、今月、お試しでフェイスブック、そして、Googleに、最低ラインの予算で出せる広告をうってみました。フェイスブック様も、Google様も、勝手にMueの事をあれやこれや理解してくださり、こんなのどうですか?的な広告の提案を毎日の様に、私の携帯に提示してくださります。『これだけの予算で、1日にこれだけの人が見て、ターゲットはここに絞って、となると、こういった効果が得られます!』みたいに。既に私がSNS上に挙げているモノを使うだけなので、これと言って考えることは、何も無い。

この広告は「ヘナ、始めました」的な内容で、投稿させて頂いていて、Googleに関しては18歳から65歳のMueのお店の近隣の方をターゲットにされているはず。この広告があったから、アキラ君の検索にMueが出たのか、どうなのかはわからないけど、広告をうち始めて、実際にご来店頂いたのは、港区在住中学3年生。

カットが終わって、自転車のところまで送って行くと「また、来ます!」って言ってくれたアキラ君。

“集客”という点において、自分の理想や、予想とは、今日のアキラ君は、全く違う現実であり、理想とは違っても、目の前のお仕事を、選り好みしていけるほどの身分でもない。けれど、なんだろう?この満足感。目新しいモノを求めるのではなく、新しいモノを探す為に、しっかり目を見開けていようと思う。

この日は間違いなく、私には、お昼が一番長く感じた日でした。