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人生のタカラモノ

2023年、最後の店長日記。

今年最後は、何を書こうか?と思っていた時に、

どうしても書いておきたい”事件”がおきた。

そして、この”事件”が

私の今年の反省であり、来年への架け橋となる。

 

この事件に合わせるように見つけた、

私がフォローしている朝日新聞デジタルの連載

『いつも どこかで』の記事を少し紹介したいと思う。

”聖獣麒麟”

のイラストで知られる

キリングループの商品に関するお問い合わせ窓口である

「お客様相談室」

電話やメール、手紙、チャットボットなどを通じて

一日約200件の質問が寄せられる。

 

 

チームの合言葉は「ノールール」

心がけていることは

「お客様の質問の背景に思いをはせる」ことだ。

何を不安に思っていて、どうして問い合わせに至ったのか。

聞かれたことに答えるだけでなく、質問の奥にあるものを意識している。

 

画一的な回答をそのまま伝えるのではなく、

一人ひとりへの最適解を工夫しようというものだ。

毎月20日を過ぎたくらいに

約1か月の間に必要と見込む分の

お店で扱っているシャンプーやトリートメントを発注させて頂くメーカーがある。

月一回、担当者とラインでのやりとりで、1日、遅くても2日後には商品が届く。

今月も21日に発注した荷物が、23日午前中着とラインに記されてあった。

 

が、しかし

23日、午前が過ぎた。荷物が来ない。

午後15時、来ない。

午後19時。

たまたま、この時間のお客様の旦那様が、

このメーカーが利用している同じ運送会社に勤めているので

事情を説明し相談すると、「お客様窓口」に問い合わせするように言われる。

終わって問い合わせすると、もう受付時間が終わっていた。

 

午後22時。

私の20年来のお客様で、ご夫婦そろってこの運送会社にお勤めで、

かなりの勤続年数が長いお二人がいる。

そのお客様に遅い時間からで申し訳なかったが、

電話して相談すると、快く親身になって対応してくださり、

明日の朝8時半にアップされるこの地域の担当ドライバーの電話番号があるから、

お問い合わせ窓口よりも早くて、そっちの方が確実だと言われた。

次の日の朝8時

まずは8時からのお問い合わせ窓口に電話。ラッキーなことにすぐに繋がる。

さらに

8時半担当ドライバーにも電話した。

担当ドライバーに、

昨日の午前中着のMue宛の荷物が無かったか?

と聞くも、数分後、

確認したけど無かった。今朝の午前の便にも無い。と言われる。

この日の後2便に入っていたら、連絡します。と。

 

午後16時。電話が無い。

モヤモヤしすぎて、再度私の方からドライバーに電話する。

「荷物、ないですね」

「あの、よく隣のビルと住所が同じなので、

間違って荷物が届くことがあるんです。

どこかに、間違って届いているとか、無いですか?」

「いや~、無かったです。

そもそも、追跡番号もないし、メーカーの発注ミスかもしれないですよ。

メーカーに聞いてください。

ちゃんと、送れてるんですか?」

 

実は、数か月前にも

午前中着と言われていた荷物が届かないことがあった。

この時も今回も、よりによってメーカーの休みの土日に

こういう事態になる。

そして、この時もネックになったのが”追跡番号がわからない”という事だった。

この時の事がきっかけで、これ以来

私はこのメーカーに”追跡番号”を発注の際に教えてほしいとお願いした。

そして、おそらくMue個別対応で

”追跡番号”を発注時に伝えてくださるようになった。

美容室とディーラー、及び一部のメーカーとの商品の発注や関係性は、

今だに、どこか膝を突き合わせるくらいの近さというか、

困った時には、いつでも言ってください!的なちょっと昭和の名残がある。

 

昭和のおっさんの私でも、働き方改革が推進されているこのご時世に

お休みの時にメーカーに連絡するのは、いかがなものか?と思うし、

そもそも、おそらく直ぐには、繋がらない。

 

さらにタイミングが悪いことに

私は、今回の荷物の発注時に

「私が言い出したことなんですけど、

今回から追跡番号は、いらないです。”信用してるんで”」

なんて、かっこつけてメーカーにラインしてしまった。

そして、その直後2日後に、この荷物届かない事件がおこる。

 

40年以上続く老舗のシャンプーのメーカーに対して

私はまだたった3年しかお取引が無いことや、

一人でやってる美容室なので、発注できる数なんて他店に比べると少ないものだ。

そういう自分が勝手に背負った、メーカーに対する負い目から、

なんだか、わざわざ個別にやってもらうのもな。私のわがままかも。。。

と謎の私の思い込みも発生して

”追跡番号、やっぱりいりません”発言になった。

 

結局、この日も荷物が届かなかった。

この日の営業が終わったのが19時。

 

日曜日の夜19時。

メーカーには申し訳ないけど、

明日の朝に見てもらったらいいかと思いラインする。

これまでの経緯を説明し、まだ荷物が届いていない事。

そして”追跡番号”教えてください。

信じてますけど、もし発送ミスなら、いつに届くか教えてください。と。

明日の朝は、何かしら動きがある。と思って帰る。

帰宅後、お風呂から上がって日付が変わる2分前

23時58分

ラインが鳴る。

「ん?誰?」

 

”文野代表

ご心配をお掛け致しまして誠に申し訳ございません”

 

メーカーの担当の方からだった。

注文した荷物の追跡番号。

ホームページにて確認してくださった結果、この荷物が

【23日12時52分に配送完了】

になっていること。

今の時点では、ここまでしか分からないので、

明日の朝に問い合わせをしてくださること。

その後も、謝罪の文面が続いていた。

 

 

間違っていたのは、メーカーではなかった。

 

軽はずみに

「信用してますから」なんて言葉を使ってはダメだった。

その言葉の重みは

こんな時間に人を動かすことになるなんて。

わかってなかった。

 

そして何より、後悔した。

最後にメーカーを疑ったことを。

 

冒頭のキリングループ「お問い合わせ相談室」のように

私の質問の背景に思いを馳せて

”何を不安に思っていて、どうして問い合わせに至ったのか”

を考えてくださる人だったのに。

 

毛布にくるまったら、涙が出た。

申し訳なさと。悔しさと。

 

次の日の朝

メーカー、私でお問い合わせ窓口にそれぞれが問い合わせる。

そこからもいろいろあったけど、

結果25日のお昼に荷物が届いた。

 

全てが片付いた後、

このメーカーの担当の方にどうしても謝りたくて、

ラインでは無く初めて電話をした。

 

私には聞き馴染みのない、関東方面のイントネーションで、

明るく電話にに出てくださり、

「文野さんが謝ることでは、ないですよ」と

おっしゃってくださった。

疲れていたのか、声が聞けてホッとしたのか、その人のその言葉に

また泣けてきた。

 

聖獣麒麟がやってくるのは

『良いことの前触れ』と言われているらしい。

一人でお店をしていると

何を信じていいのか、わからないときがある。

今の私は、自分で自分が勝手に作った囲いの中で、

もがいているだけで、

自分にとって、都合の良い答えしか出てこない。

 

「ノールール」

この言葉が、ちょっと気になる。

人生のタカラモノの在りかは、

きっと、聖獣麒麟の行く手の先に、埋められている。