NEWS
お知らせ

  1. TOP
  2. 店長日記
  3. 感謝申し上げます。5周年

感謝申し上げます。5周年

2025年1月15日

毎日、沢山の方々に温かく見守られ、Mueは5周年を迎えることができました。

月並みですが、それでも言いたい

「本当に、ありがとうございます」

お店がオープンした5年前、初日の朝。

ディーラーのM氏が、まさかのサプライズでお店に現れたので、

不覚にも涙腺が緩んでしまったのを思い出します。

M氏は、

そのお店の規模やオーナーの気質やなんやらを全て考慮して、

必要な物を全て提案して、その全ての物をミスなく発注して美容室をオープンさせるプロです。

 

そのM氏が5年前のオープンの時

”今年は(2020年)

文野さんにとって新たなスタートの年でもあり、

2020年の始まりの年、そして、十二支の始まりの子年と

3つのスタートの年が重なって最高のスタートですね”

とラインがありました。

 

そして、今年2025年

初詣でみた住吉大社の鳥居の近くの大きな巳年の看板には

”巳年は、一皮むけるに最適な年”だと。

お店の屋号「Mue」は

フランス語で”脱皮する”という意味があり、

Mueをオープンしていい感じに巡ってきた5年目の巳年。

お店の名前に相応しい”一皮むける1年”にしたいと思っています。

歌手、俳優、プロデューサーとして活躍している

小泉今日子さんの講演会「小泉今日子トークライブ」の記事を去年読みました。

この講演会では、小泉今日子さんが人や本との「出会い」

歌や舞台などに対する思いを語るというもので

小泉今日子さんが「恩師」と慕う演出家の久世光彦とのエピソードを

語ったものが書かれてありました。

小泉さんがデビューしたての頃に久世さんと出会い、ドラマの演出を通して

お芝居だけでなく、すてきなことをたくさん教わったこと。

小泉さんが文章を書く様になったきっかけも、読売新聞の読書委員になる橋渡し役も、

この久世さんだったこと。

小泉今日子さんが『空中庭園』という映画に主演で出演した時、

久世さんからもらった手紙があり、その手紙にあった言葉を今も

大切にしていると言います。(以下、久世さんからのお手紙の内容です)

 

”『空中庭園』を見ました。

大きな目が不安そうに泳いでいた『あとは寝るだけ』の頃を思い出すと、

ずいぶん大きくなったものです。あの頃は確か、15、16でしたね。

 

その小泉が立派に主役を張っているので、とてもうれしく思いました。

ただ、これ以上うまくなってはいけません。

あなたが書いている読売新聞の書評も毎回読んでいますが、どんどんうまくなってくので、

感心すると同時に、少し不安になります。

もっと自由な、のびのびした自分の言葉で書くといい。

 

どこかいびつで間が抜けていて、ドジで子供っぽさがのぞいて見える、

そんな小泉らしさが、僕たちは楽しいのです。

芝居も文章も、うまさの先には、

あまり広い世界はありません。

毎日、もっとびっくりしたり、ときめいたりしてください。お元気で”

 

 

 

「うまさの先には、あまり広い世界はありません」

ってどういう意味?って去年から考えきたのだけれど、自分の中で消化できずにいた年明け。

5周年を迎える前日、止まっていた何かが動き出す。

以前からご予約を受けていた卒業式の袴のセットと着付け。

いつもお願いしている着付けの方との日程が合わず

代わりに着付けを担当してくださる人を、去年から何人かあたっていたのですが

どういうわけか、どの人も無理。”最後の砦”と思っていた人に連絡することになりました。

この人とは頻繁に連絡を取っているわけでは無く、申し訳ないけど、いつも

私の緊急事態発生の時。

だからこの人も、きっと「また、何かあったな。。。」と思っているに違いないです。

なのに「お久しぶりです」から始まる私のお願いに、

いつもいつもハイテンションで対応をしてくれます。

 

少しだけ私より年上のこの人は、

大阪、八尾市在住。以前勤めていたお店のお客様であり、

美容師であり、理容師であり、ご両親の代から美容業界の人脈が凄い人です。

あるときは、トラックを改装して移動美容室にし、自ら運転してどこでも美容室になっていたり

着付けはもちろん、日本髪を結う為に弟子入りしていたり

かと思えば、

あるとき連絡すると「今、北海道の牧場で牛の世話してます!」

自分探しの旅にいきなり出ていたり、

「今、介護の仕事してますねん」とかいうときもあり。

今はご自宅で美容室をしながら、いろんなことをされています。

だから(?)私が困ったなぁと思った時に、この人の顔が浮かんでしまう。

 

 

今回、いつものごとく「お久しぶりです」から始まるラインを送ると

なんと新年早々、事故に遭い怪我をして手がうまく使えない。

踏ん張って指に力を入れて帯を結べないから、自信が無いのでお断りしたい。

その代わりに自分の着付けの先生を紹介すると言われました。

う~ん。。。。。それでも良いんだけど、、、、、

”最後の砦”に、私も引き下がらず「袴なんですけどね~」

というと、「あ、袴なんですか?」

そこから一気に話がまとまって、着付けを受けてくださりました。

間違いなく、困っている私をほっとけなかっただけだと思う。

自分の勢いだけで頼んでしまった自分を恥じて、

仕事の帰り道に、本当に手は大丈夫なのか?と

この先の事もある、無理しないでほしいので、やっぱり辞めるというのでも良いです

とラインした次の日の朝。この人からの返信は

”今年は毎年仕事を受けていた貸衣装屋さんが閉店されて

成人式は呑気に過ごしていたんです。

 

成人式って一生に一度きりじゃないですか。

だから絶対に失敗できないし、

着付けが苦しくて着物嫌いになったらあかん!

そのお客様が初めての成人式で着物着てすごく楽やったら

この先も着物きたいなーって思ってもらえる様にって。

妙な使命感をもっていつも紐の一本結ぶのにも魂込めてました。

大袈裟やけど(笑)

 

だから毎年、年末年始はチョイ緊張気味やったんです。

でも今年は久しぶりにのんびりできて、

これに味を占めて

あと生きてるうちに何回こんな穏やかなお正月を過ごせるかな?

もう成人式は断ろーかなーとか楽な方楽な方に行きかけていたのですが

このタイミングで文野さんから連絡いただいて

あー、やっぱりまだまだしっかり頑張らないとあかんのやろうなー

って思いました。

自分のふんどしの紐 締め直すやつね

だから逆に感謝してます。

 

そしてね。

不思議な話なんですが、

年末に飛び込みで新規のお客様がおみえになって。

よーよー話すると、ずっと文野さんにやってもらってたと。

今は何年も美容室ジプシーだそうです。

 

あーー文野さんお元気かなぁ?

と思っていた矢先にご連絡いただいたので

はい!!きたーーーーーーー!!

ってね。虫の知らせでした。

文野さんとはすてきなご縁やと思っています。

小泉今日子さんは

お仕事をする中で、小手先だけでやってしまいそうになる時

「いけない。いけない」と。久世さんからのあの手紙を思い出す。

 

成人式は絶対に失敗できないという思いを抱きながらも

昔のような難易度の高いヘアスタイルが好まれなくなったのもあり、

年々、成人式に対する自分の熱量が下がってきて

生意気にも成人式をも、小手先でやってのけてしまった。

見る人が見れば、私の仕事は「あー、練習せんと挑んだな」とわかるに違いない。

情けない自分をさらに浮き彫りにした、ラインの返信の重みのある言葉の数々。

 

「うまさの先には、あまり広い世界はありません」

奇しくも

5周年を迎える前日に私の中でこの意味を理解することができた。

自分のふんどしの紐を締め直すのは、私の方だ。

 

「まだまだ楽したら、あきません。」

どこからか、そんな声がする。6年目の始まりです。