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これでいいのだ

雪の舞う夜道を歩いて帰った日が何度となくあった、2月。

そんな寒いシーズンの大阪に寒波の到来だというのに、

5年ぶりに来店してくださったお客様がいます。

しかも、東京、広島から。

お二人とも予約サイトのメッセージ欄に

「ダルマみたいにまるまるした

おばちゃんがやってくるけど、私やからびっくりしないでね~」とか

「日々の家事、育児に追われ

世捨て人のとなってオシャレとは無縁な自分の姿で会いに行くのは恥ずかしい~」とか

自虐的なことを盛り込んでくださっていた。

どこぞの土地へ行こうが、さすが関西人。

私だって、同じ。

5年という歳月を経て、このお二人の目に今の自分はどう映るだろう?

そんなことを考えていたことが

バカバカしくなるくらい、お互い何も変わっていなかった。

この時期になると

お客様からよく聞く言葉があります。

”有給を使わないといけないから”

”103万を超えてしまうから”

福利厚生や社会保険の元、休まないといけない。

故にポッと休みができたので、それならば何処かへ!

と帰省も兼ねてご来店に至るパターンもある。

 

そういうきちんとした福利厚生に恵まれてこなかった私としては

この手の話題や大型連休になると

美容師を選んだことを少し後悔する。

もちろん、悔やんでも仕方ないこともわかっている。

 

Mueの前のテナントビルの3階、同じ目線の高さにある

窓からお互いの様子が丸見えのお店も美容室。

そのお店がなんだか去年から暇な日が多く、

お店の下で会うと挨拶を交わしていた男性のスタイリストも

(この人がこのお店の人気のスタイリスト)

最近、見ない。

ちなみに、オーナーの男性スタイリストは、ほぼ週末しか来ない。

あの人、辞めたのかな?

どうでも良いことに対して、好奇心が高まってお店のSNSを見る。

 

SNSから得たお向かいのお店の情報は、おばちゃん美容師が見るには、眩しすぎた。

 

若くて勢いに乗る男性オーナーは去年、

ピラティスのスタジオ、心斎橋エリアに名前の違うヘアサロン、

さらに、東京の原宿エリアにヘアサロンの3店舗を出店し、

ご自身もセミナー講師や、イベントプロデュースもされているとか。

クラブでお店のオープニングパーティー開催。

 

頻繁にあげている”リクルート”のインスタグラム

載せている雇用条件も、かなり充実している。

若い美容師たちへの、夢に満ち溢れたメッセージを読みながら、

 

見るんじゃなかった。。。。。

私の好奇心の、バカ!!!!!!

「そんな、ちっちゃい仕事してどうすんねん」

辞表を出し、この先はプライベートサロンでやっていくことを伝えた時に

雇われていた会社の社長に言われた言葉。

社長には、

一つのお店にいるのではなくて、

マネージャーとしていろんなお店を回る仕事にシフトしてはどうか?

と打診されたこともある。

そのたびにいろいろ考えたけど、

やっぱり、自分のお店の”現場”を離れることを選ばなかった。

それは、

自分の顧客に対する責任感。

と言う名の一種の執着だったとは思うけど、

組織のマネジメントよりも、いち技術者を選んだ。

 

その延長線上に今の自分の仕事のスタンスがあるから

「ちっちゃい仕事」止まりの事しかできないのは当然だけど、

たまにキラキラした美容師さんを見ると

おばちゃん美容師でも、やっぱり少し凹む。

 

 

「米国で初めての黒人大統領」のバラク・オバマ氏

10代のオバマ氏が差別を受けながら苦悩した記事を読んだ。

”いったい自分は何者なのだろう”と

夜になると自室にこもり黒人文学をむさぼり読んだ。

どれも同じ苦しみが描かれているだけで「逃げ道は見つからなかった」

ただ唯一、異なるものを感じたのが、マルコムXの自伝だったそうだ。

獄中で黒人史に目覚め、解放運動を率いた伝説的な指導者だという。

 

”黒人が自らの文化を大切にしなければ、ましてや白人がそれを尊重することは無い”

そんな考えにオバマ氏は共感したらしい。

(2025/2/21 天声人語より抜粋)

 

この記事を読みながら、

私は自分で自分の美容師という職業を、

どこか卑下しているところがあるんだと思った。

そんなことをあれこれ話したお客様からは

こんな言葉を頂いた。

 

「”美容師”という肩書をそのまま体現し、固く生きていくことは、何も間違いではない」

 

朝、お店の掃除中にふと見渡した時の店内は

朝日が差し込み、なんとも言えない良い雰囲気に包まれる。

それを見ると、とてもこのお店が愛おしくなる。

 

だから、そう。

やっぱり自分は、これでいいのだ。