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すべては憧れから

先日、母親がヘアカラーとカットにお店に来てくれた。
母親は、自分の容姿に自信が無い。若い時の母親自身と比べて変わり果てた今の姿では、同窓会にも行けないらしい。だから母親は、私の前に勤めていたお店も、スタッフや、お客様に見られるのが嫌で一度も来なかった。
そんな母親も、さすがにここには来てくれる。要らない!と言っても、売上に貢献しにも来てくれる。他に人がいないと言う事が理由かも知れないけれど。
私の実家も自営業で、両親が小さい町工場を父が亡くなるまで経営していた。景気の浮き沈みに直結している製造業で、その中で踏ん張り続けて、“儲ける”と言う事もほとんど無い仕事ばかりの人生だったと思う。
そんな背中を見て、絶対にサラリーマンがいい!と思っていたはずなのに、なぜか私も自分でこうして経営する様になった。

母親が最近話してくれる事は、父親と仕事をしていた時の苦労の話が多い。子供のころから大人になっても、私が家に帰るといつも仕事していた両親は、私が知っている事よりもっとたくさん苦労してきたんだと思う。断片的に思い出す父親や、母親の姿が、その時はどんな気持ちだったのかな?と考えるだけでちょっとジーンとしてしまう。

「すべては憧れから」この言葉は、私が尊敬している美容師さんがよくおっしゃっていて、今日もこの言葉に触れている美容師さんがいた。これが多くの美容師さんの原動力になっている事は間違いない。美容師だけじゃなく、憧れと言う人でも物でもいいから、そこに向かって行く純粋な気持ちが何よりもベースになるのだと思う。
「憧れ」について考える。
ひょっとしたら、苦労して、仕事ばかりしてきた両親が何より私の憧れなのかも知れない。憧れる美容師さんはもちろんいるけど、もっと深いところにある憧れは、いつも見てきた背中にあるのかも。
だから、まだまだ頑張れる。せめて同じ位の汗はかかないと。