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ワーカーホリックの冒険

ある日、タイ料理を食べながら、

「文野さん、夏休みの予定は?」と聞かれ、

「夏休み、無いです」と答える私。

「それ、あかんよ」

ここまでのくだりは、今まで何度も、たくさんの人と交わしてきた会話が、

「一日、休めとは言わないから、朝仕事して、お昼から休んで、

サンセットに間に合うくらいから、海の家でバーベキューをしに行こう」

目の前の(”友人”というには、おこがましいので)先輩は

「この夏の自分にとっても(そこに行くことは)”チャレンジの夏”なんだ」と言って、

お互い”一皮むける冒険の夏”にしよう!と誘ってくださった。

まるで、そこがバンコクみたいな(バンコク知らないけど)お店のタイ料理が美味しかったこと、

ビールはそんなに飲んでないのに、既にほろ酔いだったこと、

いつも、言葉を選びながらも、私に本音を言ってくださる先輩。

そんなことが重なって、ここで、この誘いに乗らなかったら、

この先、何も変わらない自分が想像できた。

15日月曜日の予約をその場でチェック。

見事に朝だけ埋まっている。

ドキドキしながら、その場で月曜日のお昼からの予約をきった。

(せっかく、甲斐ちゃんから、ネット予約の”臨時休業”のやり方を教えてもらったのに

この時思い出せず。。。)

私は”お休みを取る”という事に、とっても勇気がいる。

その理由はいろいろあるし、長い年月で染み付いてしまっていることの一つ。

私の中で、定休日以外に休んで、どこかへ行くという事は、

本当に恥ずかしいけれど、”冒険”の意味に近いことだった。

当日は、お天気も快晴。

お出かけ慣れしてない、終始わちゃわちゃしている私に課せられた、

車のナビを運転手にうまくフォローするというミッションは、

予想通り全くダメで、高速に乗るも一時中断(笑)

コンビニの駐車場で、この先輩の言葉を拝借させて頂きますが、

”チームワークを再度固めてから”

再び、目的地へ。

海が広がる光景に、波の打ち寄せる音に、

それまで頭の中にあったものが、すこーんと無くなった.

今、目の前に在る物しか、頭の中に入ってこなくなった感じがした。

夕日が沈む前に、海に入って浮き輪で浮きながら見上げた空や

海面と同じ高さで見る地平線。

太陽にたどり着くんじゃないかと思うくらい、海面に反射した夕日の道。

生まれて初めて見た、オニヤンマ。

もうこの先、こんなに立派なものは、食べれないであろうアワビ。

今回、お世話になったご夫婦は

地元の農家でありながら、夏は休みなしで海の家をされている。

真っ黒に日焼けした肌に、しっかり刻まれた目や口にできたシワが

すごくかっこよく見えた。

ただでさえ忙しい時に、快く私たちを迎えてくださった。

 

先輩は言う

「自分は、周りの人に良くしてもらえる。

こうやって、人にやってもらったご恩を、

やってもらった人に返すことだけが、恩返しではなく、

誰か違う人に、同じようなことを自分がすることもその人たちへの、恩返しなんだ」

 

“一皮むける”は、ここにある。

休みを取ることで、仕事に(自分に)フィードバックできることが必ずあるから。

という、先輩の言葉を信じてついてきて、

今の自分じゃ、物足りない気持ちになった。

 

「仕事だから」という、

私にとってそれは、実はとても都合の良い理由で、

自分が人に何かを与えることから、逃げてきただけなんだと思う。

本当の人の温かさを、私も誰かに届けることができるようになる。

そう、教えて頂いた夏になった。