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髪を切ること

「ヘアドネーション」ご存知の方も多いと思います。小児ガンや先天性の脱毛症、不慮の事故などで頭髪を失った子供たちの為に寄付された髪の毛でウィッグを作り無償で提供する活動です。
ここ何年間で日本でも、柴咲コウさんや、芸能人がドネーションに参加したりする事で、認知度が上がりご自分の髪の毛を寄付する方が増えました。私が初めてドネーションを知ったのは、もうだいぶ昔。軽く10年は前になります。お客様のお子様がハワイに住んでいらして、その方がドネーションに参加する為に髪の毛を伸ばしていると聞きました。既にアメリカではドネーションという活動があり、それに参加する人もたくさんいると聞きました。
基本的に、このヘアドネーションには原則として31センチ以上の髪の毛が必要です。昔は、ヘアカラーしててもダメ。パーマがあたっていてもダメという、なかなか基準を満たすのが難しかったのですが、最近は15センチ以上でも大丈夫だったり、ヘアカラーや、パーマも大丈夫という団体もあります。
“31センチ以上切る”これが、なかなか難しい。だって31センチ切ったら、よほどの長さがないと確実にショートヘアです。だから芸能人の方もほとんど、ドネーションの後はショートカットになっているはずです。
今日、ご来店のお客様で、ヘアドネーションをする事を目標に髪の毛を伸ばして来られました。約5年間、ほとんど切らずでした。私の記憶でこの5年間で、毎月カラーはご来店してくださりましたが、カットはおそらく3回です。トリートメントをしたりしながら、頑張ってきましたが、やっぱりある程度の長さまで来ると、伸ばすのは本当に難しかったです。何度も諦めそうになりながら、頑張ってのばしてこられました。

そして今日、いよいよ切る日がきました。
ドネーションを目指してきたし、切ると決めてきたけど、やっぱりロングヘアをバッサリ切るとなると、急に不安になったようです。やっぱりこのままでいこうかな?と直前に迷いも出たようでした。
だけど、「変わりたい」という気持ちが最終的に勝ってドネーションに入りました。
バッサリ切った毛束を見て、ご本人がちょっとウルッとされていて、今から切るヘアスタイルは、絶対にいいヘアスタイルにしよう。と思いました。
髪の毛には、その人5年間の思いが詰まっていて、それを切り離して、今から作るヘアスタイルになると思うと、自然に気合いも入りました。

「髪を切る」って、ロングヘアをバッサリ切る様なカットでなくても、その人の身体の一部である髪の毛に一緒に想いを馳せることだと思いました。
ハサミを入れる瞬間に、繋がっているモノを切り離すということに、責任を持ちたいと思います。

今日はとてもいい経験ができました。忘れてはダメな感覚を思い出させてくれたと思います。
美容師は、やっぱり、いいお仕事です。