コインランドリー白書

もう、かれこれ月日は一年以上になるかと思う。
美容室の営業で欠かせないアイテムの一つが”タオル”
今やタオルも、レンタルやリースを利用する美容室も増えた。
だけどお店をオープンした時にそんなことは微塵も思い浮かばず、
意気揚々とドラム式洗濯機を買い
一日営業で使ったタオルは全部、極力その日のうちに洗濯して乾燥までしてきた。
しかし、使い続けて5年を過ぎると、ドラム式の乾燥機能がダメになり、
前日に洗い終えたタオルを、お店から徒歩3分のコインランドリーに運ぶのが
毎朝の一番最初にする仕事になった。
(その半年後には、すすぎの機能に入ると爆音がするようになり、結局修理する)
ドラム式洗濯機で同じ量のタオルを乾燥すると4時間以上かかるところを
コインランドリーを使うと
お店の3階までの階段2往復と、乾燥20分間、200円で終わる。
そして、何より「利は川下にあり」
という伊藤忠商事の経営方針ではないけれど
コインランドリー滞在時間、長くても、3分間。
そこには思いもよらぬ世界が広がっている。
(心斎橋に近いという事もあるが)コインランドリー利用者の多くは
インバウンドの方々。いろんな言語が飛び交っていることは当たり前。
今は夏なので短パン、Tシャツ、ビーチサンダル。というラフな服装で
家族全員で来ていたり、カップルなど、だいたいが複数で来るので
コインランドリーの中が混雑する時もある。
いつもお掃除に来ている女性スタッフから聞くところによると、
朝6~7時台が一番込み合っているとか。
この時代、スマホを洗濯機や乾燥機に向かってかざし、翻訳機能を使って
母国語が何であろうと、何でもできちゃう。
洗濯も乾燥も100円玉しか使えない機械だが
設置されてある両替機で、もちろん両替もできちゃう。
たまにスマホを持って来なかったらしき人は、
洗濯機をガン見。あとは自分の勘を頼ってそーっと何かしらトライしている。
あ、しかし。
忘れてはいけない、
本能レベルでフレンドリーな人が多い、ここは大阪。
困っている人がいたら、もちろん助け船を出す、地元の人たち。
英語を話しているかのような不思議なイントネーションの
間違いなく”日本語”の身振り手振り付きで何やら教えていたり、
逆になんで?と思う位、英語ペラペラで説明している人もいる。
以前、私も
縦書きで”宮本武蔵“と書かれてあり、宮本武蔵の立ち姿のイラストが入ったTシャツを着た
歯の白さがとっても際立つ、アフリカ系宮本武蔵ファン(知らんけど)の若者に
50円玉2枚を差し出され、
「これと100円玉と変えてくれないか?」的なことを英語で言われたことがあり
「もちろんやで!」と
タオルドライ待ちラスト3分の間に、国際交流ができた。
朝に週5でコインランドリーに行く私。
当然、地元に住む常連さんと顔見知りになる。
何度も顔を合わせているうちに、
軽く会釈するだけから、「おはようございます」が声になり、
そのうち、
「あそこのビルに入る新しいお店は、○○なんだって」とかいう
街の情報が入ってくる場になっている。
さらに、ずっと昔からこの街でお商売をされているらしき人から聞く
”この街らしさ”を肌で感じ、
自分のお店がこの街でやっていく為に、外してはいけないポイントが見えてくる。
「利は川下にあり」なのだ。
100円入れれば回りだす、大きな機械の前で
名前を聞かれたり、どこで何やってるの?とかって聞かれた事は一切なく
「おそらく、この人は○○(職業)だろう」とか言う
フワッとその人がまとっているモノだけで成り立っている。
どんな国のどんな人でも、ニュートラルな雰囲気が流れている、不思議な場所。
週に1度だけお会いするオシャレなマスターがいる。
(おそらく同業者と思うのですが。。。
少し長めの髪にゆるめのパーマorクセ毛のヘアスタイル。勝手に心の中でマスター呼びしてます)
「おはようございます」しか言ったことない方だけど、
先日、コインランドリー以外のところで、ばったりお会いした。
お互い朝のコインランドリーウエアではなく、
私は仕事仕様の服装、マスターは、どこかにお出かけするようだった。
「おお~!」
四ツ橋筋沿いですれ違い際に、ほぼ同時に同じような声を上げた。
もちろんそれ以上の言葉は無く、会釈してお互い自分の行きたい方向に歩きだす。
ただそれだけなのに、
夏の澄んだ青空のような、どこまでも清々しい気持ちで、お客様の待つお店までの道を急いだ。