商売人さん
昨日、最後のお客様は、私の尊敬している「hitofushi」のオーナーの水本さんでした。
私の心を、“勤め人”から“商売人”になりたいと動かせた人です。
まずは「hitofushi」の事を少しご紹介します。
水本さんは奈良県吉野出身。父方が「吉野杉箸の卸問屋」母方が「吉野杉箸職人家」という生粋の「吉野杉箸血筋」今でも、ご自身のおじいさんは80代後半ですが、現役の箸職人です。町中に箸作りに関わる事を生業にしているお家がたくさんあり、機械の音や軒下に干された箸の風景が町を賑やかにしていたようです。しかし、どの業界もそうだと思いますが、安価な輸入製品の普及や、割り箸=環境破壊みたいな風評被害により、国産割り箸が売れない時代が来て、子供の代に家業を継がせる事ができない悪循環が、この町の伝統産業の灯が消えていってしまいます。
そんな中、高校を卒業後、進学の為に郷里を離れるのですが、郷里に帰る度に衰退していく伝統工芸の町を見て「自分を育ててくれた吉野杉箸への自分にできる恩返し」として吉野杉箸の良さをもっともっと伝えなくてはという、これは、昨日、水本さんご自身がおっしゃってましたが、「伝える使命」を感じたそうです。そこから吉野杉箸と同じ様に輸入製品、大量生産品の陰にかつての活気が失われた昔ながらの技と道具を次の世代に伝えること。そして、それらの道具と暮らす生活の中から忘れかけていた日本の良さや、面白さを感じてほしいということ。そんな商品がとてもシンプルに並ぶ素敵なお店です。なので「売れる商品(売るための商品)はないよ」と。
私が水本さんの素敵だなぁと思うところは「商売人」ということ。これは、私だけがそう思っているかも知れませんが、大阪の人に「商売人」って褒め言葉やと思っています。お客様がお店に入った時の、つかみがいい事(そのお客様に合わせた“つかみ”を持っている)、そして、ちょっと粋な?(うーん、なんて説明しようかな?なんとも言えないイントネーションと言おうか?)大阪弁を使い、無意識に積み重ねてきたんだろうなと思う水本さんの「個性」があります。(昨日も自分で私、変わっているからと言っていた)誰とも被ってない感じが素敵です。おおらかで、人の話を聞いているようで、最後は自分で決めてやる。そんな私が思う商売人代表の水本さんです。
水本さんにこのコロナ禍の中、会える事は少なくなったのですが、会えばいつも励まされました。「なんとかなるから」(笑)これが一番多かったですが、必ず、行き詰まっても「抜け道がある」と。
「私には、“私からこれを取ったら何も残らない”というものが何もないの。だから何でもできるの」
って言った言葉がとてもカッコ良かった。
昨日は、水本さんのパーマが恐ろしくかからなかったのもあり、終わってみれば夜10時をまわっていた。hitofushiのテナントビルのオーナー(お父ちゃんと呼んでいた)からかりてきた自転車を立ちこぎして淀屋橋駅までここから向かい、枚方まで帰って行った水本さん。
こんな商売人さんになりたい。
今日は、西大橋駅付近の空がきれかった~!