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読書

通勤道のなにわ筋

朝の太陽の光を浴びたアジサイに目がいき、スマホのカメラを向けていた時、

そばを通りかかった、

綺麗なブルーの瞳に、綺麗なブロンドの長い髪、

シュっとした体つき(スタイルが良かったことを言いたい)

上下ナイキのランニングウェア

「Oh,beautiful!」

だか何だかおっしゃって、私のすぐ隣で彼女もスマホを向けていた。

この先、日本に居ながら、日本語だけでは足りない世の中になっていくのだろうな。。。

と思いながら、スマホをなおして歩き出した。

以前に、毎月通っているフットケアの先生から勧められていた本がある。

『君たちはどう生きるか』(吉野 源三郎 著)

同名タイトルの宮崎駿監督の映画が

今年のアカデミー賞を受賞したことでも話題作。

その映画のベースになったとはいえ、ジブリの世界観とはまた違う、

もっと身近に、自分自身と重ねて考えることのできる小説だった。

1937年に出版されたこの作品。

コペル君というあだ名の15歳の少年が

日常の生活の中で、自分の目で見る

勇気、いじめ、貧困、格差、人間のズルさなど

今も昔も、人ってこうやって物事と実際に対峙して

いろんな感情を抱きながら成長していくのではないか?と

読み進めながら思う。

「人間の立派さが、どこにあるか?それを本当に自分の魂で知ること」

まもなく50歳になる自分が、こういう文章にハッとさせられるのだから

魂レベルで理解している”人として立派”なモノを

自分の中に落とし込めずに生きている。

 

良い本に出会う事

それは、私にとってちょっと厄介だ。

なぜなら、

今、目の前にある、この有り難い幸せな日常を、

ほっぽり出してどこかに行ってしまいたくなるからだ。

 

そんな気持ちでいた時、

友人が仕事で福島県に行くと聞いた。

以前からこの友人との話題に上がる、85歳の未だ現役社長のお手伝いだという。

その日程が休みの火曜日と重なっていたので、これは、”チャンス”

と思ってしまった。

 

「私も、行こうかな」

 

そして、福島県へ半ば強引に連れて行ってもらえることになり

その時に絶対に読もうと思って持って行った本。

『傲慢と善良』(辻村 深月 著)

こちらも、この秋に映画の上映が決まっている。

 

婚活のアプリで出会った男女二人が主人公。

結婚式を間近に控えたある日、突然彼女が失踪する。

その失踪した彼女のを手がかりを求めて、思い当たるところすべてに向かう彼。

ミステリー作家で定評のある辻村深月さんだけに

このままミステリー小説になるのかな?と思いきや

 

彼女の実家のある群馬県に向かった彼が、

自分と彼女、それぞれの婚活がどういうモノで

どういう道をたどってきたのかが、彼の感情と共に書かれている。

彼の中にも、そして彼女の中にも潜む

お互いの”傲慢さや善良さ”を彼自身が知ってしまう。

人間の感情の奥深いところの部分を

確かな文章で書かれてあって

私自身(婚活はまだ経験したことは無いが)にも

思い当たる気持ちがあった。

 

 

彼女を探す中で彼が出会う、様々な登場人物もまた、面白い。

その中で、一番私が心にのこり、

この小説が”刺さる小説”と

文庫本の帯のキャッチコピーに書かれてあった意味がわかる登場人物が、

群馬で彼女がお世話になった結婚紹介所の老婦人。

このご婦人に、彼が言われた言葉、

 

「現代の日本は、目に見える身分差別はもう無いですけれど、

一人一人が自分の価値観に重きを置きすぎていて、

皆さん傲慢です。

その一方で、善良に生きている人ほど、

親の言いつけを守り、誰かに決めてもらう事が多すぎて、

”自分がない”という事になってしまう。

傲慢さと善良さが、矛盾なく同じ人の中に存在してしまう、

不思議な時代なのだと思います」

 

この他にも、この老婦人の”刺さる”言葉の数々は、

(興味のある方は、本を貸しますよ)

いかに、自分がモノを考える時、

“無知”であるか、”未熟”であるかをこの本で思い知らされた。

偶然にも、この小説の最後の舞台は、福島県。

私が福島県でご一緒させて頂いた85歳の社長は、

傲慢さとか、善良さとか、そんなことはとっくにどこかに置いてきたのか?

人生の経験がこの方の感情をそうさせたのか?

どこまでも良い意味で”自分基準”の偏りのないフラットな方だった。

 

心に刺さる読書は、体力も使う。

いろいろ心を揺さぶられて、この本を読み終えた後

この社長の事を思い出す。

あのフラットさが、あの社長の魅力なんだと思う。

 

さぁ、次はどんな本を読もうかな。

ある意味苦しいけど

また、どこかに行きたくなる様な本に出会いたい。